ペンライトって、1本で振るのと2本で振るのとでは、まったく別物だ。ましてやそれが3本になった瞬間、会場の空気そのものが変わる。あの日、T-ARAの12年目のステージで、フロアにいた“家族”ことファンの振り方が、まるで打ち合わせでもしたかのように一斉に変わった。あれは一体、何だったんだろう。

「ペンライトは2本まで」という長年の常識

T-ARAのライブといえば、まず思い浮かぶのがオレンジ色のペンライトだ。ファンなら知っている通り、このグループのシンボルカラーはオレンジ。デビュー当時から、フロアはいつも夕焼けみたいな色に染まっていた。

で、長いあいだ、僕らファンのあいだには暗黙のルールがあった。それは「ペンライトは基本2本まで」というもの。片手に1本ずつ、両手で2本。これがT-ARAファンの“標準装備”だった。

理由はシンプルだ。T-ARAの振付は、手を大きく使うものが多い。両手を広げたり、胸の前で重ねたり、メンバーを指さしたり。だから片手に2本も持つと、どうしても動きがぎこちなくなる。指が痛くなるし、落とすリスクも上がる。

それに、会場の一体感という意味でも、2本がちょうどよかった。みんなが同じ本数で振っているから、動きが揃って見える。3本にすると、人によっては片手に2本、片手に1本という“アンバランス型”になり、リズムがずれて見えることもあった。

10年以上、このスタイルが続いた。新人ファンが「3本持ったらダメなんですか?」と聞くと、古参が「いや、ダメじゃないけど、揃わなくなるから」と答える。そんな光景を何度も見てきた。

3本目を持つ人が現れ始めた転機

ところが、ここ数年で少しずつ空気が変わり始めた。きっかけは、メンバーの構成が変わったことだ。活動の形が変わり、ステージに立つ人数も、パフォーマンスの見せ方も、以前とは違ってきた。

すると、ファンの側にも変化が起きる。「あの曲は、このメンバーを推したい」「サビはこの2人を目で追いたい」。そうなると、2本じゃ足りない場面が出てくる。片方を推し色、もう片方をグループカラー。それだけだと、もう一人を応援できない。

そこで登場したのが、3本目だ。最初はごく少数だった。フロアの片隅で、片手に2本、もう片手に1本。周りから見ると「あ、あの人すごいことやってるな」という感じだった。

僕も実際に3本目を買った。買ったはいいものの、最初は全然うまく振れなかった。右手に2本、左手に1本。振りのタイミングが合わず、片方だけ遅れて光る。隣の人にぶつかりそうにもなった。正直、「これは失敗かな」と思った。

フロアの視線が「揃える」から「合わせる」へ

面白かったのは、3本持ちが増えるにつれて、周りの反応が変わったことだ。最初は「浮いてる」という目で見られていた。でも、ある時点から、その視線が「どうやって振ってるんだろう」という興味に変わった。

これは大きい変化だったと思う。それまでのT-ARAファンダムは、どちらかというと「全員で同じ動きをすること」に価値を置いていた。揃っていることが美しい、という感覚だ。

でも、3本持ちが出てくると、価値観が「揃える」から「合わせる」にシフトした。全員が完全に同じ動きをするのではなく、それぞれが自分の推しを追いながら、全体として一つのリズムを作る。ジャズのセッションみたいなものだ。決まった譜面を全員で弾くのではなく、それぞれが即興しつつ、ちゃんと一つの音楽になっている。

“家族”が一斉に振り方を変えたあの瞬間

で、冒頭の「あの日」の話だ。

それは、T-ARAの12年目の節目にあたるステージだった。会場はいつも通りのオレンジ。僕も3本のペンライトを握って、中盤のバラードナンバーを聴いていた。

バラードが終わり、次の曲のイントロが流れた瞬間、フロアの空気が変わった。それは、アップテンポの代表曲。いつもなら、ここで2本のペンライトが一斉に同じ軌道を描く。

ところが、その日は違った。

イントロが鳴った瞬間、フロアのあちこちで、ペンライトの本数が「2本から3本」に切り替わった。みんな、それまで片手に2本をまとめて持っていたのを、さっと1本ずつ持ち直したんだ。

そして、サビに入った瞬間、振り方が一斉に変わった。右手の2本は大きく上に、左手の1本は胸の前で小さく。それは、あらかじめ決められた振付ではなかった。誰かが号令をかけたわけでもない。ただ、そこにいた全員が、同じタイミングで、同じ判断をした。

あの一体感は、正直、鳥肌が立った。誰も「3本にしよう」なんて言っていない。なのに、フロア全体が3本モードに切り替わった。これは、12年という時間を一緒に歩いてきたからこそ起きた現象だと思う。

なぜ「一斉に」変わったのか、その理由を考える

冷静に考えてみると、理由はいくつかある。

一つは、曲の構造だ。T-ARAの楽曲は、サビで一気に音が広がる。そこでペンライトの動きも大きくなると、視覚的にも盛り上がる。3本にすると、光の量が1.5倍になる。2本のときよりも、フロアが明るく、鮮やかに見える。この効果を、ファンは体で覚えている。

もう一つは、メンバーの視線だ。ステージ上のメンバーは、フロアを見ている。2本のときは「わあ、きれいだな」という反応だったのが、3本になると、メンバーが一瞬驚いたような表情を見せることがある。その反応が、ファンにとってはご褒美になる。もっと魅せたい、という気持ちが生まれる。

そして最後に、12年という積み重ね。長く応援していると、言葉にしなくても通じるものができる。あうんの呼吸、というやつだ。3本にしよう、というのは、誰かの指示ではなく、フロア全体の総意として自然に発生した。これが“家族”と呼ばれる所以だと思う。

3本持ちを始めたい人への実践ガイド

じゃあ、実際に3本持ちをやってみたい人に向けて、いくつか実践的なことを書いておく。僕が試行錯誤して辿り着いたやり方だ。

持ち方と本数の配分

基本は「利き手に2本、逆手に1本」だ。利き手のほうが細かい動きがしやすいので、2本をまとめて振るのに向いている。逆手は、アクセントをつけるための1本、というイメージ。

ただ、これは絶対ではない。両手に1本ずつ、そして3本目を首から下げる、というスタイルの人もいる。要は、自分が一番振りやすい形を見つけるのが大事だ。

最初は1曲だけ3本で振ってみる

いきなり全部の曲を3本で振ろうとすると、まず失敗する。腕が疲れるし、リズムも崩れる。僕のおすすめは、1曲だけ、それもサビだけ3本で振ってみること。

たとえば、アップテンポの代表曲のサビ。そこだけ3本にして、他は2本に戻す。これを何回か繰り返しているうちに、体が3本の感覚を覚えていく。

周りとぶつからない距離を取る

3本持ちは、どうしても占有スペースが広くなる。2本のときよりも、腕の振り幅が大きくなるからだ。だから、フロアでは少しだけ周りとの距離を意識したほうがいい。

具体的には、隣の人と肩が触れ合わない程度の間隔を取る。後ろの人との距離も、ペンライトが当たらない範囲で。これはマナーというより、お互いが気持ちよく楽しむための知恵だ。

落とし物対策は必須

3本になると、落とすリスクも1.5倍になる。僕も一度、サビで振り切ったときに、左手の1本を落としかけた。幸い、ストラップをつけていたので事なきを得たが、あれがなかったらと思うと冷や汗ものだ。

ペンライトには、必ずストラップをつける。手首に通しておくだけでも、安心感が全然違う。それと、予備の電池も忘れずに。3本分となると、電池の消耗も早い。

無理はしない

一番大事なこと。3本持ちは、あくまで選択肢の一つだ。2本のほうが楽しい人もいるし、1本に集中したい曲もある。周りが3本だからといって、自分も3本にしなきゃいけない理由はどこにもない。

T-ARAのライブは、みんながそれぞれの楽しみ方で参加していい場所だ。3本で輝く人もいれば、2本でしっとり振る人もいる。その多様性こそが、このグループのファンダムの強みだと思う。

これからペンライトは何本になるんだろう

12年目のあの日、フロアが一斉に3本モードに切り替わった光景は、今でもはっきり覚えている。あれは、単に本数が増えたという話ではない。一緒に歳を重ねてきたからこそ、言葉なしで通じ合えるものができた、という証明だった。

これから先、4本になる日が来るのかもしれない。あるいは、また2本に戻る日が来るかもしれない。大事なのは、本数そのものじゃなくて、そのときフロアにいる全員が、同じ方向を向いて光を振っているということだ。

次のライブで、もし周りが3本に切り替えたら、ちょっとだけ試してみてほしい。最初はぎこちなくても、そのうち体が覚える。そして、あの一体感の一旦を、あなたも味わえるはずだ。